壱岐の商業



焼酎(しょうちゅう)


麦と米

今の壱岐で一番活気があるのは焼酎に関係している業種でしょう。

壱岐は麦焼酎の発祥地とされています。

壱岐の焼酎の原料は大麦です。

ウイスキーも確か大麦を原料にしていたと思います。

農民は、米は年貢でとられてしまうので、税金のかからない麦で焼酎を造ることを始めました。

焼酎の造り方は室町時代に中国から伝わったとされています。

皆さん、ご存じのように、焼酎は蒸留方法によって甲類(ホワイトリカー)、乙類(麦や芋を使った本格焼酎)、甲乙ブレンドの3種類に分けることができます。

その中で、壱岐の焼酎は乙類に分類される本格焼酎です。

壱岐には、焼酎メーカーが全部で7社あります。




共通

そして、その7社すべてが、焼酎の造り方が同じです。

壱岐では、焼酎を造るときは、麦2/3、米1/3の割合で造ります。

麦は香りつけのため、米は甘みを出すために使用されます。

この基本的な造り方をベースにして、メーカー秘伝の具体的な造り方を加味して、独特の壱岐焼酎が出来上がります。









世界ブランド

壱岐の焼酎は平成7年に、WTO(世界貿易機関)と国税庁から「地理的表示」の産地ブランド指定を受けました。

つまり、南北17km、東西15km、面積138km2しかない小さな島の焼酎が、皆さん良くご存知のコニャック、バーボン、スコッチという産地と同じステージに立つことができたのです。

だから、「壱岐焼酎」という名前は、壱岐以外の他の場所では使用できず、国際的にブランドが保護されることになりました。

日本で産地指定を受けている焼酎は、壱岐焼酎のほかに、熊本県の球磨焼酎、沖縄県の琉球泡盛だけです。


所得番付

年間出荷額25億円。

これは、畜産の売上額29億円に次いで、大きな金額です。

壱岐の米の総生産額は15億円ですから、それをも上回ったことになります。

1升びんで150万本以上飲まれていることになります。

余談ですが、壱岐の法人所得番付の1位は酒造会社です。

もちろん、個人の所得番付でも1位は焼酎関係者の人です。







飲み方

ところで、皆さんは焼酎をどのようにして飲まれていますか。

壱岐の人たちは、焼酎35度をストレートで、チビチビと飲むのが一般的です。

しかも、スルメ、イカの刺身、とれたての魚貝類の刺身を魚にします。

でも、島外の人たちは、このような飲み方をすると喉(のど)が焼けてしまいます。

お湯割りか水割をお勧めします。

お湯割りを作る時は、まず、お湯を先に入れて、お湯の中に焼酎を入れるとうまくお湯と焼酎が混ざります。

焼酎を先に入れて、その中にお湯を入れても比重が違うのでうまく混ざりません。

お湯割りした焼酎の温度は40〜45℃が一番おいしいといわれています。

どのくらいの濃さで薄めるかは、飲む人の経験年数、こだわりにより違いますので、自分に一番最適なお湯の量を確立されるのが良いと思います。

水割りの時には、まず、コップに焼酎を入れて、その後に、水を入れることになります。

夏場は、冷たい焼酎もとてもいいものです。

焼酎は、日本酒と違い、いくら飲んでも、2日酔いで、頭がガンガン、ズキズキと痛くなることがないので、ついつい飲み過ぎに注意しましょう。

その代わり、度が強いので、足もとがフラフラになることは確かです。

そのまま、道路に寝転がって、寝入ってしまうという気持ちが分かります。


無料

壱岐の焼酎工場では、ほとんどの工場で見学できますし、無料の試飲もできます。

みなさん、焼酎工場のはしごをされてはいかがでしょうか。




常圧と減圧

焼酎の造り方には、常圧蒸留法と減圧蒸留法というのがあります。

壱岐の焼酎工場ではこのどちらかの方法で造っています。

簡単に言いいますと、常圧蒸留というのは、蒸留タンクの気圧を1気圧にして、100℃で水を沸騰させてつくる方法です。

100℃まで、沸騰させて造るので、高い沸点温度でなければ沸騰しない、いろいろな成分が焼酎の中に混ざってくることになります。

そのため、味も香りもくせの強い焼酎ができあがることになります。

言い換えれば、原料特有のコクやウマミのある焼酎が出来上がるというわけです。

長期にわたって熟成させる焼酎にはこの方法が向いています。

これに対して、減圧蒸留法というのは、蒸留タンクのなかの気圧を、1気圧の1/10程度に低くします。

そうすると、40〜50℃という低い温度で水が沸騰するようになります。

これは、皆さんが、平地でお茶を沸かす場合と、富士山の頂上でお茶を沸かす場合とでは、富士山の方が気圧が低いので、水が早く沸騰するのと同じ原理です。

減圧蒸留で、たとえば50℃で成分を沸騰させて、焼酎を造ると、たとえば、100℃で沸騰するような成分は焼酎の中に入ってはきません。

50℃以上の沸点のものは、もろみに残ったままです。

たとえば、焼酎の焦げた臭いの原因になる「フルフラール」は高沸点でないと出てこないので、減圧蒸留法で造ると焦げた臭いはしなくなります。

このようなことから、減圧蒸留で造った焼酎は揮発成分が少ないので、酒質も軽く、飲みやすく、クセがなく、香りも味も良く、ソフトタイプの焼酎になります。

最近は、減圧蒸留の焼酎も増えてきています。

皆さん方が、焼酎を買われるときは、常圧蒸留法で造ったものか減圧蒸留で造ったものかを確認して、購入されればよいと思います。