壱岐の暮らし


皆さんは、壱岐の島はいったいどんなところだろう、と思われていることでしょう。

ここでは、壱岐の島の概略をお話します。

壱岐は、島なので、農業、漁業が盛んです。

また、観光も盛んに行われています。

商業では、世界のブランドの仲間入りをした焼酎の製造や販売が有名です。


壱岐牛

壱岐は、日本にある島の中で自給自足ができる島です。

ただ、本土からの仕入れもたくさんありますが、基本的には、地場産の農産物を使用しています。

壱岐では、牛の飼育、米作り、野菜作りが盛んに行われています。


壱岐牛とは、壱岐で生まれ、壱岐で育てられた、純粋培養の牛のことをいいます。

壱岐牛は、古くは弥生時代から飼育されていました。

特に、奈良、平安時代までは、壱岐牛は日本の牛の中でもトップブランドとして位置づけられています。












奈良や京都の都では、朝廷の牛車(ぎっしゃ)を引いていました。

もっとも、牛はのろのろ歩くというのが定説ですが、当時の牛は馬のように走らせて使っていました。

鎌倉時代には壱岐には7000頭近くの牛がいたとの記録があります。

しかし、2度にわたる元寇でほとんど絶滅してしまいました。









現在の壱岐牛は、高級牛肉で有名な松坂牛や神戸牛の元牛として飼育されており、生後7〜8ヶ月で出荷しています。

1頭あたりの競り値は平均して50万円前後です。

ということで、皆さんが食べている高級霜降り牛肉は、実は、壱岐牛だというわけです。

壱岐牛はこのようにブランド品としての位置づけになっているので、耳のところに黄色いタグがつけられ、5代までさかのぼることができるような品質管理がなされています。




牛は、多いところでは200頭近く飼育している人もいます。

しかし、平均すると農家一戸あたり5〜6頭ぐらいでしょうか。

牧場はなく、「牛のまや」と呼ばれている牛小屋で飼われています。

右の写真は「牛のまや」です。

こんな感じで飼育されています。

実は、今まで、知らなかったのですが、牛には眉毛がありません。

牛の顔を、よ〜く、見ていたら、眉毛がないことに気づきました。



現在、壱岐では、繁殖牛7000頭、年間売り上げ33億円を記録していて、将来は8000頭、35億円の売り上げをめざしています。

いろいろな種類の牛を合わせると、13000頭が飼育されています。

壱岐牛の肉がうまい理由は、餌と壱岐独特の環境にあるといわれています。

壱岐は狭い島なので、周囲の海岸から潮を含んだ風が吹いてきて、それが牛の餌に自然にくっつくので、牛は塩分のミネラルが入った餌を食べて育っています。

これが、壱岐の牛肉がおいしい理由です。

牛には、赤毛の牛や黒毛の牛、黒に白いまだら模様のあるもの等、いろいろいます。

壱岐の牛は、黒毛和牛です。

これに対して、対馬の牛は、赤毛和牛です。

飼育されている場所によって、色や品種もいろいろです。











アスパラ

壱岐では、最近、アスパラ作りが盛んです。

米作りが儲からないので、田をつぶしてアスパラ栽培に切り替える農家が増えてきました。

写真はアスパラを栽培しているハウスです。

栽培を始めた昭和61年頃は、畑での露地栽培でした。

しかし、平成元年から各地でハウス栽培を行うようになり、1年中、収穫できるようになりました。

しかも、減農薬、減化学肥料を実行し、環境保全型の農業をしています。

平成13年には、壱岐の生産者全員がエコファーマーに認定されました。

アスパラ作りは、土作りが大切です。

稲わらと牛の糞尿を堆肥にし、これを畑の土に混ぜ合わせて、さらさらした土を作ります。

ここに、親木を植えて、出た芽をアスパラとして摘み取ります。




親木の根元からアスパラが顔を出しているのが分かりますか。

このようにして出てきた芽をアスパラ専用のはさみで切って収穫します。

とれたてのアスパラは、みずみずしく、しゃきしゃきしていて歯ごたえがあり、ほんのりした甘さがあります。

とっても、おいしいです。

一度、お試しあれ。








葉タバコ

私は、小さい頃、親が葉タバコを栽培していたので良く手伝わされたものでした。

葉タバコの栽培は、はっきり言って、とても大変です。

たばこの葉は、触るとねちねちしていて、とりもちのようにべたべたと手がなります。

これを間違えて、なめると、にがいというものではありません。

舌がしびれるくらいの辛さです。

写真の葉タバコは花が咲いていますが、この花は完全に摘み取ってしまわなければなりません。

そうしないと、花にばかり栄養分が行って、かんじんの葉には栄養分が周らないからです。

この葉が黄色くなると、葉を1枚、1枚とって、乾燥場で乾燥させます。

この葉タバコの収穫は6月から7月が最盛期。

夏の陽射しがカンカン照りつける日にやらなければいけません。

と〜っても、辛い仕事なのであります。






赤米作り

赤米作りは、壱岐では弥生時代から始まっていました。

朝廷や有力な豪族への献上品も赤米で行われていました。

私達のNPOでは、赤米を栽培して、皆様にお安く販売しています。

また、赤米などの田植え体験や収穫体験も行っています。

ご利用をお待ちしています。

さて、この赤米、実は、健康食品として注目されています。



赤米を炊くと赤くなりますが、この赤い原因は、赤米に含まれているタンニンやカテキンによるものです。

タンニンやカテキンは高血圧に良いとされています。

また、白米に比べて、食物繊維が8倍、カルシウムが3倍、マグネシウムが4倍含まれていて栄養面でもいうことがありません。

左の写真は、赤米でついた餅です。

とてもおいしいです。













米作り

壱岐には、長崎県では2番目に広い深江田原平野(ふかえたばるへいや・写真参照)があります。

この平野では、米作りが中心に行われています。

しかし、最近は、米の補助金がめっきり減ったために、米作りがもうからなくなり、葉タバコ、大豆、麦など、他の作物に転作する農家が増えています。

壱岐の米の品種は、コシヒカリ、ヒノヒカリがブランド米として流通しています。

壱岐の米は、長崎県では一番おいしいといわれています。

一昔前までは、米はかけ干し(かけぼし)で乾燥させていましたが、今はコンバインで刈り取って、そのまま農協のライスセンターに運び、すぐに機械で乾燥させるということが行われています。

でも、味はかけ干ししたのがおいしいという人もいます。

でも、私自身は、味の違いがよく分かりません。



右の写真は、かけ干しの様子です。

かけ干しは一束ずつかけなければならないので時間と労力ががかかって大変です。

最近では、少なくなっています。














コンバインで刈った米はライスセンターに持っていきます。

ライスセンターでは、水分検査をして、それに見合った乾燥温度と乾燥時間で、おいしい米に仕上げていきます。

もちろん、機械の使用料を払わなくてはなりません。

農協もできるだけ、しぼりとろうという魂胆です。











ゆず栽培

ゆずというと、皆さんはどういうことを想像されるでしょうか。

ゆずには、ビタミンCがレモンの3〜4倍含まれ、また、クエン酸やペクチンなども豊富に含まれています。

クエン酸は、疲労回復、肩こり、筋肉痛を予防するはたらきがあります。

また、胃液分泌を促進し、胸やけ、胃痛を解消したりもします。

ゆずに含まれるビタミンCは、お肌の大敵、シミ、ソバカスの原因となるメラニン色素の生成を抑制するので、シミ、ソバカスの予防に効果があります。







このように、ゆずは良いことずくめですが、正直言って、ゆずの栽培は大変です。

まず、ゆずにはトゲがあります。

このトゲに刺されると、2〜3日は、ずきずき痛みます。

実は、この私、先日、ゆずの枝の剪定(せんてい)をしていたら、トゲが指にささってしまいました。

トゲを抜いてくれる人も、周りにいないので、そのまま3週間くらい、放っておきました。

2週間くらいは、ズキズキ痛み、突き刺さったトゲも見えていましたが、最近、そのトゲが見えなくなりました。

まさか、血液の中に入って、体中を周って、心臓にでも、突き刺さるのではないかと、心配しています。






また、幼木の頃は、ゆずの葉の中にミカンハモグリガという害虫がもぐり込んだり、カミキリムシにやられて木が枯れたり、アブラムシにやられたりといろいろあります。

このようにして、栽培されたゆずは、11月頃、収穫されます。

ゆずのレシピについては、郷土料理のページをご覧ください。











休耕田

最近、壱岐の島では、休耕田が増えてきました。

理由は、@農業をやる人が、高齢者になったこと、A米を作っても、もうからないこと、B農業自体が、肉体的にも精神的にもきついこと、C朝の日の出から、夕方の日没まで、仕事をしなければならないこと等です。

私も、東京から壱岐にやってきた当初は、農業にもえていましたが、最近は、その気力も、だんだん失せて、また、もとの税理士業に戻ろうかな〜、とも思っています。

一度、米を作るのをやめたら、写真のように、セイタカアワダチソウを中心とした、雑草が、あっという間に、繁殖して、取り返しのつかないような、事態にまでなります。

壱岐だけではなく、日本全体が抱えている問題でもあります。





転作

皆さん、この周辺は、何だと思いますか。

実は、これは、田んぼだった所です。

米を栽培しても、もうからないので、政府は、さかんに補助金をつけて、転作を奨励するようになりました。

写真の周辺も、もとは、田んぼでしたが、今は、このように、大豆を栽培するようになりました。

田んぼだったところが、畑になるのを見ると、なんだか切ない感じがします。

皆さん、米をたくさん食べましょう。

特に、壱岐の米は、汚染農薬の心配はまったくありません。

写真の田んぼは、私の田んぼですが、早めに大豆を収穫して、枝豆にして、酒のつまみにしようと、思っています。